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Date registered: 2013年8月26日
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Aug 14 2015
2015年7月24日(金)から3日間にわたって開催されたLife Seed Labo夏期プログラム。このプログラムでは「ハンバーガーであなたもサイエンティスト」をテーマにハンバーガー作りを通してハンバーガーのおいしさのヒミツ・フシギ・ヒケツを科学的に解明します。ただ単に知識を植え付けるのではなく自ら実験して食べることで体験が学びへとつながり勉強がもっと楽しくなるはず!最終日においしいハンバーガーを食べるために試行錯誤した3日間の様子をレポートします。 場所は、サスティナブルなスマートタウンの生活スタイルを提案する湘南T-site内にあるFERMENTです。FERMENTは食とものづくりスタジオで、デジタル工作機器を自由に利用でき、デジタル家電などが揃ったシェアキッチンが組合わさったオープンスペース。そんなスマートシティならではの農と食のプログラムを展開できればと思っています。 7月24日(金)1日目:野菜のカタチとおいしさのヒミツ —————————————————————————————– シャキシャキでみずみずしい野菜にするにはどんな切り方をしたらいいのでしょう。机に並べられたのはレタス、トマト、キュウリ、タマネギ。どれくらいの水分が野菜に含まれているかを測るにはどうしたらいいかをみんなで考えます。もちろん、野菜に突き刺して何秒でピピッと計測する水分量計なんてものはここにはありません!でも、そんなことしなくたって実はいいセンサーをみんな身体の中に持っているのです。そう、それが「口」です。食べて感じたことは主観だけれど、例えば「一番柔らかいを’1’、石のように硬いを’5’として指標を作れば食感や水分の出方を数値に表すことができるのです。 それぞれの野菜はどれくらい水分を含んでいるかを味見で確かめたあと、今度は野菜を切ってみます。野菜には繊維というものがありそれは私たち人間の身体でいう血管です。血液を通して栄養を身体中へ運ぶのと同じように植物も繊維を通して養分や水分を茎や葉へ運ぶのです。では食べるときはどうでしょう。繊維に対して垂直に切るか、水平に切るかで食感と水分に違いはあるのかを考えながらざくっざくっと小気味良く音を響かせながら野菜を切っていきます。 思い切って半分に割ってみた者、そおっと薄い輪切りに挑戦してみた者、それぞれが切った野菜からは断面のカタチのサンプルができあがりました。それぞれの断面を並べてみるとまったくカタチが違います。そもそも、いつも食べている野菜の部分は植物としての「実」、「葉」、「茎」のどれなのか。実は野菜には水分を多く含むことによって種を守る実ものと厳しい環境から大事な水分と栄養を蓄えるために何層にも重なり結球する葉ものとに分けられま す。それぞれの植物としての構造を知ることが実はおいしいシャキシャキ野菜のヒミツだったのです。 7月25日(土)2日目:変化するお酢のフシギ —————————————————————————————– マヨネーズとピクルス。ハンバーガーの味を決める二つの調味料には実はあるフシギな関係があるのです。 初日に引き続き2日目もまずはテイスティングから。出されたのはレモン。ほんのちょっと齧っただけで「酸っぱ〜い!!」そう、酸っぱいということは酸が関係しているのです。 そこでほかにも酸っぱいと感じるお酢やジュース、またハンドソープや台所洗剤といった身の回りにある液体を酸性の度合いを測るph試験紙で測定してみることにしました。ここで理科の話をすると、物質が水に溶けたものを水溶液と言いその性格はすべて酸性かアルカリ性に別れます。実験の結果では見事に酸性よりのものとアルカリ性よりのものとに別れました。 しかし、変色の具合を肉眼で確認するPH用紙の性質上、同じPH3と測定しても実際には同じ性質ではありません。そこでより正確に測れる酸度計を使ってみると5つのサンプルを酸性〜アルカリ性に並び替えることができました。 では、いよいよ「酢」を使ったピクルスとマヨネーズ作りの開始です。空気中の細菌はタンパク質でできていて酢にはタンパク質を変性させる働きがありるため強力な殺菌作用があるのです。例えば、酢飯は普通のご飯の三倍も長持ちするそうです。この作用を利用して野菜を長期に渡り保存しておけるようにしたのがピクルスです。 酢で保存する仕組みを理解したら、漬け込む野菜をカットします。どうやったら味が染み込みやすいか、見栄えがよくなるかをよく考えて野菜を切っていきます。計量した酢、砂糖、塩を混ぜ、さらにハーブを加えたピクルス液を鍋で一煮立ちさせた後、野菜を詰めた瓶に注ぎます。こんなに色鮮やかなピクルスを作ることが出来ました! 一方、マヨネーズ作りはというと・・・実はここにも酢と油の秘密が隠されています。水と油は混ざらないという説が本当に正しいのか実際に身体を張って検証することに。ペットボトルに入れた水と油を全力でシェイクするとできたのは振る前とは違う乳白色の液体。水と油は果たして混ざったでしょうか。 答えは、いいえ。実はこれ、一見して水と油が混ざったように見えますが時間が経つと分離して元に戻ってしまいます。しかし、ここにある特別な性質を持つ材料を加えて同じように中身を撹拌させると今度は正真正銘、水と油が混ざった状態を作り出すことができるのです。その正体こそマヨネーズの発明にいたったあの食材です。 あの食材とは卵のことでした。卵こそ水と油をくっつける働きのある特別な作用をもった物質です。卵は乳化剤と呼ばれ、今回の実験のように本来混ざり合わない性質を持つ二つの物質をくっつける働きがあり、その作用を乳化と言います。ほかにも、パスタを茹でる時に麺から出た成分(乳化剤)がソース(油)とパスタ(に付着する水分)を混ぜ合わせる作用も同じ乳化の現象です。 卵に調味料と酢を加え、そこにサラダ油を垂らします。そして撹拌してみるとほんの数十秒ほどで混ざり合わさった液が白く濁り始めました。これが乳化の起こった証拠です。卵+油+酢という組み合わせなのにドロリとした粘性を持つマヨネーズが完成しました。いつも食卓に出てくるマヨネーズがこんなフシギな反応によって作られていることを実験により知った私たちはまた一歩サイエンティストに近づいたようです。 7月26日(日)3日目:ウマイ肉のヒケツ ————————————————————————————— さて、いよいよこれまでの研究の成果をハンバーガー作りに生かす日がやってきました!ジューシーなお肉はハンバーガーの最大の魅力。肉汁がしたたるウマい肉の秘訣に迫ります! 期待に胸を膨らませた皆の前に出されたのはなんと冷凍されたお肉!「あれ〜解凍しなきゃ食べられないじゃないか〜!」とブーイングが飛びます。そうなんです。最終日のテーマは「冷凍された肉をいかに美味しく解凍できるか。」 用意したのは異なる材質の4枚の板。この上に冷凍肉を乗せて置いておくと、どの板の肉が最も早く解凍できるでしょうか。実験に移る前にまず仮説を立ててみます。子どもたちは口々に自説を述べます。さあ、実際に早く解凍するのはどの肉なのか、同時に板の上に冷凍肉を置いて実験スタートです。 三日間で学んだことの一つは実験の際に条件を揃えることでした。本当に知りたいデータだけ差異が出るように他の要素はなるべく同じ状態にします。秒数をそろえて肉は板の真ん中に。 実験では5分ごとに異なる性質の板の上の肉の温度を測ります。お肉の重さ、面積は同じなのに板の種類によって溶けるスピードが違うのは実は4枚の板の熱の伝導率が異なることが原因です。熱の伝導率とは熱が物質に伝わる速さのことです。 5分ごとの温度の記録を折れ線グラフにしてみると驚きの結果が出ました。なんと大半の冷凍肉の温度が順調に上がる一方、途中で温度が下がっている点があります。実はこれは途中で温度計の計測位置を変えてしまったからなのです。本来ならばここで実験は失敗です。すべて同じ条件で測るからこそ温度の変化のデータを比較できるのです。しかし意外なことに付き刺す位置を変えたことで肉の部分によって温度差があることが分かりました。もしかしたら科学の発見はこういう偶然に支えられているのかもしれませんね。 次の実験ではアルミ、銅、ステンレス、テフロン加工のステンレスの4種類を用いてそれぞれ肉を焼きます。注目するのはハンバーグの肉汁をできるだけ流れ出さずに留めること。ここでも各自の予想を元にフライパンの種類を選び実験スタート。 焦げ付くのが早いものとそうでないもの、肉汁をしっかりキープしておけるフライパンの答えが分かったところでいよいよ自分たちが食べる分の肉を焼きます。 ここまで本当にみんなお疲れさまでした、たぶんハンバーガーを作るのにここまで時間をかけた人はいないでしょう。しかし三日に渡り検証を繰り返した素材を使ったハンバーガーは格別の味がすることでしょう。また、それぞれの過程でなぜ美味しくなるかをしつこく考えたことで、お家に帰ってもあの味を再現できるはずです。
Dec 26 2014
2014年12月23日から、Kids Life Seed Laboがスタートしました。場所は、サスティナブルなスマートタウンの生活スタイルを提案する湘南T-site内にあるFERMENTです。FERMENTは食とものづくりスタジオで、デジタル工作機器を自由に利用でき、デジタル家電などが揃ったシェアキッチンが組合わさったオープンスペース。そんなスマートシティならではの農と食のプログラムを展開できればと思っています。 第1回のテーマは「アースチェックとクリスマスパーティ」 まずは新たにできたスマートシティの土のチェックに街に繰り出しました。果たして野菜を育てるのに適した土壌になっているのか、アースチェックです。公園内の土を水分量や色、におい、虫などの観点からチェックしていき、様々な土を持ち帰りました。最終的には、ph検査液で土の酸度をチェックします。 今回も土の特徴をよく捉えた命名で土を表してくれました。その一つ一つのphをチェックしたところ、アルカリ性に傾いた土が多いことが判明しました。新しく作られたスマートシティだけに、外から持ち込まれた土がほとんどでこのような結果だったことも考えられます。野菜を栽培することを考えると、少し酸化させるためにピートモスなどを混ぜ土壌も街とともに育てていく必要があるかもしれません。子ども達も土の性質を知るための一つのメジャーを手に入れて、真剣な顔つきで研究者のような手つきで土壌チェックしました。 その後、T-site内で電気で育てられているレタス、ルッコラ、バジルなどの葉物野菜を収穫しに行きました。苗から2週間で収穫できるほど育つというPanasonic製のPlant Facroryは、災害のことなどを想定すると非常に頼もしいと感じました。 後半のキッチンでは、巻寿司と生春巻きをひたすら巻きに巻いて、ロール料理に挑戦です。できた巻物はきれいにカットして、収穫したサラダで作ったクリスマスツリーを飾り付けるオーナメントに。色鮮やかで華やかなクリスマスツリーの完成です。食べられるクリスマスツリーを囲んで一足早いMerry Christmas!!
Dec 26 2014
2014年12月7日、国立京都国際会館にて「防災食ワークショップ」を開催しました。今回は10種類以上の種と粘土と土でつくる「タネだんご」と保存食だけでつくる「めしのタネ」を作りました。畑で備蓄することや日々の食事を工夫していくことが、万一の備えになることを学ぶ機会となりました。 昨年同様、会場内では障がいのある人や高齢者の自立した生活を助ける電子情報支援技術(e-AT)とコミュニケション支援技術(AAC)の普及を目的とする「ATAC」というカンファレンスも催されていました。 障がいと防災、一見何の共通項も見いだせないようなこの二つも、実は「困難について考える」という点で結びついているように思います。何不自由なく生きている人であっても、災害がいつふりかかるかは分かりません。その非常事態において初めて体験する困難は、もしかすると障がいのある人たちが日々抱える困難と同じであるかもしれません。こうした視点に立って日常を豊かにしていけば、それが非常時に備えることに繋がるように思います。皆さんも是非この機会に日常を見直してみてはいかがでしょうか。
Dec 25 2014
2014年11月24日(月)に開催されたLife Seed Labo2014年秋期プログラム。このプログラムでは「豆から学ぶ言葉と数のフシギ」をテーマに、世界の豆料理を通して数え方の面白さを学びました。 豆を数える方法にはどんな数え方があるでしょうか。例えば「一粒」というとても小さな単位から、「一袋」というパック詰めされた状態を表す大きな単位まで幅広い数え方があります。 そこには、農作業や加工、流通といった様々な場面で扱われる豆の様子を伝える”言葉のパワー”が秘められています。 様々な数え方を探しに、まずはガーデンに向かいます。豆の数え方と一言といっても、豆がどんな状態にあるのかによって数え方は変わってきます。豆が土で育っている状態では、「1株」や「1本」という数え方をするのではないでしょうか? では収穫する時はどうでしょうか。「豆を収穫して下さい」と大雑把に伝えるだけでは、どれくらいの量を収穫したら良いか分かりません。そんな時には、豆の量を表す数え方が必要です。例えば、「1房(ふさ)」といえば、ぶどうの粒が房になって連なっている状態をイメージするように、一つの枝に房になっている状態を表します。一方で、「1莢(さや)」というとサヤエンドウのように何粒かが袋状の莢の中に入っている状態を表すため、「房」よりも小さな単位になります。このように、数え方を変えるだけで相手に豆の量や状態まで伝えることができるのです。全てを「1個」や「1つ」で数えるよりはるかに情報量が多い数え方だといえるでしょう。 続いて収穫した豆を選定して、種類別に保存していきます。この時には、「莢(さや)」よりももっと小さな単位を表す「粒(つぶ)」の状態にしていくことになります。大切なタネになるので、一粒一粒ていねいに・・・ さぁ、ガーデンでの農作業を終えて、次はキッチンへ移動です。 今回は世界の豆料理として「ビーンズサラダ」「ファラフェル」「ビーンズスープ」の3品にチャレンジです。 キッチンでも、豆にまつわるたくさんの数え方が溢れています。なぜなら、豆から作られる加工品の数はかなり多く、それぞれの流通の仕方によって数え方も異なるからです。大豆を発酵させた納豆は小分けの発泡スチロールに入ってで流通するため「パック」、醤油のような液体の瓶だと「本」、細かく粉砕された粉状のきな粉は「g(グラム)」、豆腐は「丁(ちょう」など。 キッチンツールに目を向けてみると、道具も数を正確に量るために大小さまざまな形と大きさのものがあります。「すくう」という一つの行為をとってみても、計量スプーンからお玉やレードルまで多種多様です。 子ども達とも豆とキッチンツールに関連した数え方を探しました。動作から想定されるものだけでも、「1つまみ」「1さじ」「1まぜ」「1かけ」「1回」「1押し」「1滴」など。日本語の数え方が500種類以上あるというのも納得です。 いよいよ、料理のスタートです。材料の量を表す単位を工夫して、自分オリジナルの数え方を入れたレシピを作ろうというミッションにも挑戦!! 子ども達は目の前にある道具をうまく使いながら、粉の重さを量ったり、トマトやキュウリなどの野菜の数を表したり、液体の量を計量してレシピを完成させました。 生活の中にはたくさんの数が存在しています。むしろ、数をカウントせずに生活することは不可能に近いでしょう。それだけ私たちの生活に密接に関わる数を表す言葉が豊かになれば、伝えたいことをより詳しく相手に届けることができるようになるでしょう。皆さんも、少し意識して数え方に目を向けてみませんか。そうすると、今まで見えなかった物の状態や量、それを扱う道具の使い方や使う状況までもが色鮮やかに彩られた世界が目の前に広がるかもしれません。
Nov 03 2014
2014年8月17日(日)から4日間にわたって開催されたLife Seed Labo2014年夏期プログラム。このプログラムでは「ピザ作りでサイエンティストになろう」をテーマに、ピザ作りを通してサイエンティストとして必要な知識を国語、算数、理科、社会の教科学習に関連させて学びます。勉強も食べ物を食べるまでのプロセスと繋げて学習できれば、もっと楽しくなるはず!!人はそもそも食べるために生き、学び、働く生きものなのだから。 ピザを通した学びとピザが完成するまでのエキサイティングな4日間をご紹介したいと思います。 8月17日(日)1日目(国語):トマトを解剖しよう —————————————————————————————– ‘‘「トマトは甘酸っぱい」これは誰もがみとめる事実?それともあなたの意見?事実と意見を区別して話すことができるようになれば、科学的な表現ができるサイエンティストに仲間入りできるかも!?’’ このテーマを掲げ、ピザ作りの初日がスタートしました。収穫の夏を迎えたオークファーム柏の葉のガーデンには、形や色が異なるトマトが鈴なりに実っています。子ども達は、ピザには不可欠なピザソースを作るべく、食べごろのトマトを次々と収穫していきます。収穫ターゲットとなったトマトは、6種類(マイクロトマト、シンディオレンジ、シンディスイート、アイコ、イエローアイコ、サンマルツァーノ)。 1日目のミッションは、事実と意見の区別をつけた表現ができるようになること。そのための題材となるトマトの名前と特徴を学びます。 トマトの特徴を知るために、カットして解剖します。見てみると、中の様子が全く違うではありませんか!?ゼリーや水分が多いものと、そうでないもの。この違いは、実は日本とイタリアのトマトの食べ方の違いを反映したものなのです。 日本ではトマトをサラダなどのトッピングとして生食します。そのため、甘みが強くジューシーな品種が多くあります。一方、ピザの本拠地であるナポリのピザには、楕円形をした大玉トマトの品種「サンマルツァーノ」を使ったピザソースが使われています。サンマルツァーノはピザソースを作るために改良された品種。だから、手早く煮込めるようにジューシーさを押さえてあるため、ゼリー部分が少なくコクが出るような味という特徴をもっています。 子ども達は枝分かれしてきたトマトの成り立ちを聞き、日本とイタリアの食文化の違いがトマトの味や形にまで影響を及ぼすことを学びました。では、どれほど味が違うのでしょうか。この違いを言葉を用いて人に伝えるために、「事実と意見」を区別して表現する力が必要なのです。 いよいよ本題に入るために、子ども達にはトマトを試食したときの味を思いつくままに書き出してもらいました。食べたそばから出てきた表現は「マイクロトマトはやや甘い」「シンディスイートは酸っぱい」などなど。しかし、この表現では食べた人の個人的な意見が分かるだけで、他のだれもが分かるような表現=事実を述べた表現にはなっていません。そこで、意見から事実へと表現をレベルアップさせるために客観的な指標を導入することにしました。投入されたのは、糖度計とPh試験紙。 この指標によってトマトの甘さと酸っぱさが数値化され、客観的な甘さと酸味を記述することができます。この段階になって初めて事実を述べることができるのです。指標を使って確かめたあとの子ども達の表現はこのように変化しました。「サンマルツァーノはPH3、糖度5」「マイクロトマトはPH4、糖度8」これらを比べてどの程度の甘みと酸味なのかを事実として伝えられるようになりました。 トマトを解剖し、比較することを通して、意見と事実を切り分けて表現することができた子ども達は、話し方まで意識し始めているように感じました。ピザソースに使うサンマルツァーノについて学んだことを活かして、2日目のソース作りで美味しいトマトソースに仕上げましょう!! 8月18日(月) 2日目(社会):ソースで世界と歴史を旅しよう —————————————————————————————– ‘‘ピザソースには、トマトソースやクリームソース、ジェノバソースなど、色々なソースがあります。世界中にあるたくさんのソースを調べて発見し、世界旅行をした気分になってみよう!’’ 2日目はトマトソース作り。トマトを収穫してカットし、煮込んでいる間にソースの起源を調べながら世界を旅します。社会科を学ぶ一つの目的に、様々な情報を調べるという力を身につけるということがあります。そこで、トマトがピザになるまでという歴史を紐解きながら、世界中に散らばるピザにまつわる史実をリサーチしていくことにしました。 トマトの起源は8世紀のアンデス地方で見つかった野生種とされています。その後、16世紀にスペイン軍によってメキシコが侵略された際に、トマトがヨーロッパに持ち帰られて欧州に広まったようです。200年ほど観賞用とされたトマトも、17世紀に発生したイタリアでの飢饉の際に食用となり、イタリア食文化の中で欠かせないトマトソースとして君臨していきました。18世紀にはイタリア南部の町、ナポリに初めてのピザ屋が誕生し、ピザとトマトソースが出会います。そんな紆余曲折を経て、今では世界中の老若男女に人気のトマトソースのピザが生まれたというわけです。 子どもたちもこんな歴史を学びながら、世界地図に歴史的イベントが起こった地をプロットしていきました。世界地図にプロットを落し入れてみると、トマトが長い時間と距離を経て、美味しいトマトソースへと生まれ変わっていったことが分かります。現代社会に当たり前にあるもの全てに起源があります。それらを残し、加工した先人達の営みがあったからこそ、一つの食べ物として、今に受け継がれてきたという事実そのもののが与えるインパクトはとても大きいように思います。この事実を調べながら歴史を辿っていく旅は、とてもエキサイティングで美味しいものではないでしょうか。 8月20日(水) 3日目(理科):イースト菌でピザをふくらませよう —————————————————————————————– ‘‘ピザのふわふわな生地は、どんな仕組みでふくらむのかな?生地をふくらませるイースト菌がどんな条件でよく働くのか比べてみよう。サイエンスに必要な’比べてみる”を通して、生地作りのコツもわかるはず。’’ 3日目はいよいよピザ生地づくりです。生地づくりには科学実験がたくさん詰まっています。粉にイースト菌と砂糖とぬるま湯を加えるだけで、粉から生地へと変化し、それがさらにふくらむなんてとても不思議です。しかし、その背景を垣間みれるような知識を学び、実際に実験してみたら、その不思議も謎解きができるのです。そんな謎解きを教えてくれるのがサイエンスであり、理科の実験だと思います。その楽しさを体感すべく、生地をふくらませる実験を行いました。 まず実験では、条件を統制するということが鉄則。子ども達にも、比較したいものの変化が正確に計測できるように、その他の要因が影響を与えないよう慎重に実験することを話しました。例えば、計測の正確さも重要なポイントです。 今回の実験では、イースト菌が砂糖をエサとして、温かいところ(約30度)で増えていくという特性があることに注目して2つの実験を行いました。実験1では、砂糖の量を変化させ、イースト菌の働きを、発酵した時に発生する泡の量で検証してみました。実験2では、温度の変化でイースト菌の働きが変化し、生地のふくらみが変わるのかを検証してみました。 実験1で用いた3条件では、砂糖の量を0g、5g、15gに設定し、時間経過を見て変化を記録しました。子ども達はそれぞれに仮説を立て、砂糖の量が多くなるほど泡は多く発生するだろうという共通の予想でした。 結果を読み取るのも正確に、慎重に。メスシリンダー等実験器具の使い方も学びます。気になる結果は写真の通りで一目瞭然。(写真)5gの砂糖の時にイースト菌は泡を一番高く発生させました。子ども達の仮説と異なる結果となりました。しかし、よく観察してみると15gの方は5gのよりも遥かに小さく多くの泡が発生しています。ただし、泡の肌理が細かく詰まっているため、上に高くあがっていくような泡ではないことが観察から分かりました。このことから、もしかすると子ども達の仮説通り泡の数は砂糖の量が多くなるほど増える可能性が考えられました。ですが、ピザの生地をふくらませるためには生地を押し上げるほどの泡の力が必要になります。やはり、ピザ生地に入れる砂糖の量にだいたい規定があるのはそういったことも考慮してのことなのかもしれないですね。そんなことを話しながら、実験結果の解釈を料理を美味しく作ることの難しさからも考察できる実験となりました。 実験2で用いた3条件では、0℃、30℃、60℃に設定し、30分後の変化を記録しました。こちらでも仮説を立て、イーストが働く適温に一番近い30℃での条件で最も生地が大きくなると予想しました。こちらの結果も仮説を裏切り、ふくらみの大きさは60℃、30℃、0℃の順でした。イースト菌が働いた証拠となるアルコールの匂いも、60℃が一番強く感じました。この実験結果を踏まえ、子ども達と考察しました。今回の実験で用いた容器が少し小さかったことや、発酵させた時間が短時間だったため、60℃の条件でイースト菌が一気に発酵したのではないかと考えました。ピザ生地の発酵は実験の倍くらいの時間をかけてゆっくり行います。その場合は、イースト菌の適温とされる30℃で発酵させることでベストな生地になるのかもしれませんね。 実験終了後の生地は、ナンのように手で伸ばしてジェノバソースをつけて頂きました。美味しさは僅差で、いずれも美味しかったです。というのでは、サイエンティストとしてまだまだですね。次回の実験の際には、食べたときの食感や美味しさもキチンとレポートできるようにしたいですね。 8月21日(木) 4日目(算数):ピザのコストを計算してみよう —————————————————————————————– ‘‘1枚500円のピザには、どんな材料がどれくらい含まれているのかな?コスト計算しながら、材料を選んで、食べたくなるようなピザをデザインしよう。そして、4日間の学びがつまったピザをみんなで楽しく食べよう!’’ 最終回の4回目、ピザ完成を間近に控えて子ども達に課せられたのは「ピザのコストを計算しよう」というミッション。普段、当たり前に食べているピザも、様々なコストがかかった上で1枚の値段がついて店頭で売られているのです。その背景には、材料を生産している人たちの労働や野菜が育つまでの時間があります。そんな舞台裏にも想いを馳せながら、せっせと切り詰めて材料を選んでいくという行為は、限られた資源を活かす人智の本来の使い方なのではないでしょうか。そこに、計算をする意味があるように思います。算数で養いたい本当の力は、ドリルが早くできることでも、九九が暗記できることでもなく、こうした生活の知恵として活用してこそ身になりますよね。 シーラボでのピザを食べるには1g単位で売られた野菜を500円以内におさめ、しかもデザインも食べたくなるようなものに完成させなければいけません。さぁ、大変。嫌いな計算をこれでもかというほど何度も何度も行わなければ、ピザにたどり着けないなんて…。本当はたくさんのせたい材料の取捨選択に頭を悩ませる子ども達の顔は、悩ましくもあり、興奮気味に輝くものでもありました。ピザの材料を1g単位の値段で計算し、カットの方法を切り詰めて考えたりしながらの算数の勉強はとても楽しいようです。 個性がにじみ出る選択のプロセスを経て、オリジナルピザのデザインがようやく決まったようです。いよいよ、猛烈な火をふくピザ釜でカリッと焼く時がやってきました。ピザを焼いている間に交わされるシーラボの子ども達の会話も少し変わっています。「チーズ何g使った?ピーマンは?」などと、材料をg換算でどれだけ入れたか聞き合っています。あれだけ計算してやっと手に入れたピザだから、こうなるのも納得です。よく頑張りましたね! 4日間もかけてようやく目の前に完成したピザは格別に美しく、空腹を刺激する香ばしい香りを放っていました。1枚のピザにたくさんの学びが詰まっています。トマトソースにも、生地にも、のっている具材にも、デザインにも、全てに愛着が湧く、これぞオンリーワンのピザです!!ピザに食いつく子ども達の顔には満面の笑顔と達成感があふれていました。 全てが満たされている世の中では、なぜ学ばなければいけないのか、どのように生きていけばいいのかを考える機会が少ないように思います。シーラボでは、そんな世の中に本当の学びの楽しさと、豊かに生きていくための方法を少しでも提案できればと思っています。今後も楽しい学びの機会を食べ物を通してお伝えできれば幸いです。